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【漫画】黒子のバスケはフンフンディフェンスをやめることができるか-ジャンプと必殺技について-

黒子のバスケ 1 (ジャンプコミックス)

黒子のバスケ 1 (ジャンプコミックス)

 

現在、週刊少年ジャンプの「黒子のバスケ」を読んでいる読者は、バスケ漫画の金字塔である「スラムダンク」は、読んでいるのだろうか。

 

バスケ漫画である以上、スラムダンクとの比較は避けられないと、作者もジャンプ編集者も考えているはずだ。すべてのバスケ漫画がスラムダンクを目指すべきであるとはもちろん言えないが、少なくとも、黒子のバスケがスラムダンクに追いつき、凌駕しようと考えているのであれば、超えなければならない壁は、フンフンディフェンスである。

 

 

このフンフンディフェンスは、要するに桜木花道の「必殺技」である。超人的な身体能力でパスコースを全て塞ぐこの技、初期の陵南戦の練習試合を最後に、一度も使われなくなってしまった。

 

私がスラムダンクを読んでいた当時はまだ小学生だったから、「なんで桜木花道はフンフンディフェンスしないのだろう?これを使えば仙道も牧も簡単に倒せるのにー」と不思議な気持ちでジャンプを読んでいたのである。

 

フンフンディフェンスが誰かに攻略された、若しくはあまりにも体力の消耗が激しいからもう使えない、とかいう描写があれば、私も納得したと思う。しかし、そういう説明は一切なく、突然パタリと、フンフンディフェンスは使われなくなる。

 

もちろん、大人になった今なら、その理由は分かる。初期のスラムダンクは、本格バスケ漫画ではなかったのだ。ラブコメやギャグ漫画の要素もふんだんに盛り込まれていた。それが、現在我々の記憶に残るようなバスケ漫画に脱皮するためには、いずれかの時点で「フンフンディフェンスの封印」が必要だったということだろう。これ以降、スラムダンクでは、どの選手も必殺技を使わない。だから、スラムダンクは「フンフンディフェンス以前」と「フンフンディフェンス以後」に分けることが可能なのである。

 

翻って、黒子のバスケは、いまだにフンフンディフェンスを卒業できない。新しく出てくるキャラクターは必ず「必殺技」を持っており、試合のハイライトで、必ずその必殺技は破られる。

 

作者は、新しい選手を出すにあたって、そのキャラクターとともに、「必殺技」を最初に考えているはずだ。そして次に「その必殺技を黒子たちがどう破るか」を考える。黒子のバスケは、基本的にはその繰り返しである。

 

要するに、「必殺技の応酬」という次元で捉えたとき、黒子のバスケは、バスケ漫画ではなく、BLEACHやトリコと同じ漫画なのである。私は漫画を2種類に大別するとき、「必殺技漫画とそうでない漫画」に分ける。そして必殺技漫画を基本的には次元の低いものとみなしている。

 

必殺技を出すのは、楽なのだ。なぜなら、「必殺技を出す」→「必殺技を破る」という過程を描けば、それだけでとりあえずの「勝負」になるからだ。それは禁じ手ではないが、多用してはいけない麻薬であり、使いすぎると作り手から想像力を奪うと思う。

 

思えば、ドラゴンボール、ダイの大冒険るろうに剣心、スラムダンクのようなかつての名作は、必殺技を多用しなかった。むしろ、必殺技を意図的に抑制しようとしていたように見える。

  

私は必殺技を一概に否定するものではない。漫画である以上、人気がでなくてはいけないわけで、あのスラムダンクですら、当初は必殺技漫画の道を画策していたのだから。

 

しかし必殺技は、いずれかの時点で封印すべき一過性の飛び道具なのだ。いつか間合いが縮まってきたら、真剣に持ち替え、接近戦を試みなくてはならない。もし、吹き矢や手裏剣のような飛び道具をずっと使い続けるのであれば、それはそれで、キャプテン翼テニスの王子様のような「飛び道具漫画」の自覚を持つべきである。

 

私は、この黒子のバスケに限らず、最近のジャンプ漫画が必殺技を卒業しない(できない)ことに、強い危惧を感じている。